大雪山国立公園を守るために
大雪山は「寒さ」から構築された広大な構造土や生態系があります。しかしながら、その貴重性を理解している人は少なく、崩れても保全されず、放置された登山道は侵食が拡大しているのが現状です。保全に対する行政の予算は全く足りず、地域の市町村ですら直接的な収入増につながらない山岳保全には消極的な状況です。整備も「人が歩きやすくなるための整備」が多く、「生態系保全のための整備」はほぼありません。
しかし長い目で見た時、貴重な生態系を残していくことは利用価値を高めることにもなり、生態系保全の推進は地域の誇りになる行動です。
私たちは将来のビジョンを持ち、いくつかの方針を持つことで進んでいます。
- 生態系保全の技術を高め、手法を増やしていくこと
- 山岳保全に対する費用の捻出と低予算化を行い費用対効果を高めていくこと
- ボランティアの役割を明確化し、保全の一翼を担える力にすること
- 行政・企業・研究者などとの連携を図ること
- 環境保全教育のアイデアを作っていくこと
- 全国の保全団体や個人と連携し、山岳保全の機運を醸成すること
私たちの地域は、山から流れてきた土や水で農業が栄え町になり暮らすことができています。保全とは山岳利用者だけで行なうものではなく、一見山とは関係ない人も、自然とのつながりを理解することで地域を知り、自然に興味を持つことができると思います。
自然保護とは繋がりを理解した時から始まると思っています。
保全のアイデアを行動へ
この山岳荒廃状況を改善するためには、二つのことをやらねばなりません。
一つは遠くの将来を見据えて、法律の改正や管理体制の再構築をすること。だけどこれができるまでには時間がかかり、どんどん山は崩れます。なのでもう一つ、現行の体制でできる限りのアイデアを試行することが必要です。
ボランティア参加型のイベントを行い、整備個所を増やすとともに、参加した人に山岳保全の意味をしっかりと伝えること。数人規模の小さなイベントから数十人が集まった整備イベントまで、多くの保全活動をしています。
近自然工法の実践と技術指導を行い、「生態系保全とは何か」を伝えています。
スノーモビルでの資材運搬を行い、ヘリコプターに変わる積雪地ならではの方法を模索。行政とともに施工量を増やすため準備段階からの手法を試行しています。
湧き出るアイデアを具体化すべく、日々悩み中です。
将来を考える
おそらく「荒廃する量と保全される量が拮抗する」しっかりした山岳管理体制ができた時には、今現場にいる人はもうこの世にはいないでしょう。自然の時間軸で考えると、自然保護はとてつもなく時間がかかるものです。継続していくためには、今の子供たちに「自然との共存をしていく」という意識を持ってもらうことが必要です。きっと50年後の地球は今よりもっと自然環境を考えなければ生きていけないかもしれません。
自然保護を考えた時、山岳保全はとても重要な環境教育の場であり、日本にはその自然が多くあることが、実は幸せなことなのだと思います。
目の前の登山道の崩れを直すことが人間と自然の共存につながっていく、という意識を持ってもらえた時、新しい山岳文化が作られていくと信じています。
INFORMATION
一般社団法人 大雪山・山守隊
侵食の進む大雪山の登山道において、登山者や地域住民の「民」、行政や自治体の「官」、研究者の「学」、企業の「産」と協働で生態系保全のための活動を行う団体です。
ウェブサイト